〈日々の栞〉別腹の地方創生
▼お腹いっぱいだ。そのとき目の前に美味しい食べ物や飲み物が登場。食べたい。ケーキや追い酒を前に胃は膨張。別腹だ。金曜日夜、飲み会で仕事の疲れを全消化するべく食べ物、お酒を流し込む。土曜日朝、それらは体からどっと流れ出す。全消化とは程遠い。幾度となく胃の災禍に見舞われた
▼新幹線も別腹だ。1964年に東京〜大阪間で東海道新幹線が開業。追って65年に赤字国債、66年に建設国債が初発行。75年に博多、82年に仙台を越え盛岡まで延伸。国債という別腹財源で建設した。お金がなくても大都市に新幹線は欲しい
▼しかしここから長い。2010年に盛岡〜新青森、11年に博多〜鹿児島中央間が完成。30年を要した。国鉄の経営難とバブル崩壊が響いた。博多、盛岡より先は後回し。北海道新幹線の札幌延伸は38年度と改められた。いずれも整備新幹線。鉄道・運輸機構が建設する。JRの建設費負担はない。地方の開発は問屋が卸さない
▼「地方創生は令和の日本列島改造」。石破首相は1月24日の施政方針演説で力強く掲げた。首相は鳥取県出身。鳥取は全国の都道府県の中で一番人口が少ない。そこから高校進学で単身上京。上京後も夜行列車「出雲」が発着する東京駅のホームに足を運んだ。鳥取に帰る乗客の鳥取弁が聞きたかったそうだ。そこから50年。67歳で首相に。鳥取訛(なま)りの少年は今の彼をどう見るのか
▼人口減少、産業の空洞化、税収減少。地方から東京へお金や人が流れ込む。都会を別腹開発した成長時代は、地方の衰退を招いた。17歳の全力少年に立ち返り、東京から地方を別腹で立て直してほしい。(東京・YY)
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〈2025/02/25配信〉
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