休むことは後退ではなく、事故・離職を防ぎ、品質と生産性を高める前進の仕組み。発注・施工の慣行や評価のあり方を見直し、休める現場を当たり前にする―その先に、選ばれる建設業があります。
本連載は月2回掲載予定。執筆は、あおいコンサルタント代表取締役 山本昌幸氏。建設業の人材・労務とマネジメントに精通し、特定社労士・行政書士、ISO主任審査員として実務を重ねる。
◎@なぜ『夏季休工』が経営課題になったのか
建設業者にとっての経営課題として▽2024年問題▽担い手不足(人材不足)―が挙がっていますが、ここにきて次の課題として、気候変動対策(熱中症・品質)への対応が求められています。
昨年6月から労働安全衛生規則の一部が改正され、「労働者の健康障害を防止するための義務」が強化されました。
建設業者としては、真っ先に思い浮かぶのは熱中症対策ではないでしょうか。また、建設業者はISOに取り組んでいる組織も多いと思われますが、2024年4月に気候変動対策への対応が追加されました。
折しも昨年末に国交省が試行の結果、「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」を発表しました。
このことにより国の政策として猛暑日における現場休工に進みつつあることが理解できます。
実際、猛暑下の作業環境で人材に作業させること自体、安全配慮義務の観点から問題があると言わざるを得ません。
実はこのことが前述の建設業の経営課題である▽2024年問題▽担い手不足(人材不足)―を解決する大きな要素であると考えられます。
この考え方を疑問に思う方も多いと思いますが、その疑問を解消する前に「2024年問題」と「担い手不足(人材不足)」の本質を明確にしましょう。
建設業における2024年問題とは、残業時間の上限規制への対応ですから、一人の人材で処理できる業務処理量が限定され、その処理できなくなった業務を他の人材が処理しなくてはならないが、その人材が不足しているという人材不足(人手不足)であり、正に「担い手不足(人材不足)」ということになります。
そこで、夏季休工が人材不足解消にどのように寄与できるのかという本題に入りたいと思います。
そもそも人材はどのような業界・仕事・会社に魅力を感じるのでしょうか?
私自身、数え切れないくらいの人材不足解消のサポートをさせていただいた結果、明確な回答を持っています。
人材が魅力を感じる業界・仕事・会社とは、
@自らの価値が向上できる
A向上した価値を認めてもらえる
B安心して長く働くことができる
なのです。
では、建設業界・建設業者として前述の@ABに当てはまるのでしょうか。
@については、正に当てはまるといえます。
建設業は本人の努力次第で様々な資格が取得でき、技術・技能が身に付き、自らの価値を向上させることができます。しかも、その価値は日本全国で通用します。
Aについては、それぞれの建設業者次第となります。
なぜなら、人材の価値を認めるためには、人事評価制度や賃金制度などの仕組みが必要だからです。
Bについては建設業界・建設業者としては、他の業界や職種と比較して少々分が悪いのです。
いくら自らの価値が向上し、その価値を認めてもらえたとしても安心して働くことが出来なければ、台無しであり、本人以外の親や配偶者からも好印象は得られないでしょう。ちなみに“安心”には“安全”が含まれることは言うまでもなく、広義の意味では過酷な労働環境も安心して働くことができないのです。
建設業が安全を含め、安心して働くことができるのであれば、若手・女性人材も入職しやすく、建設業界で働く労働人口の増加が期待できるのです。
しかし、建設業において安心して働くことの作業環境を阻害しているのが、夏場の酷暑期の現場作業です。
この酷暑期の作業環境を改善できれば建設業界全体のイメージが好転するのではないでしょうか。そのための夏季休工であり、国交省の「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」であり、建設業界の人材不足解消の切り札、いや、建設業を就職人気業種にできる対策なのです。
次回からさらに踏み込んで説明していきます。