私が提案したいのは、夏季休工ではなく、夏季休業です。7月・8月は62日あります。この二か月間全休にするのです。もちろん、社員全員が62連休は難しいかもしれませんが、多くの人材が62連休を取得することは可能でしょう。
このことは、土木系で公共工事を多く請け負っている建設業者限定かもしれませんが、このような提案を受けた場合、「当社は絶対ムリです」と拒否するのではなく、「もしかしたら当社でも可能ではないか?」という、柔軟な着眼点を持って頂きたいのです。
建築系の建設業者であっても、62連休は無理でも酷暑にさらされる工種をあえて7〜8月を避ける工程を組むことは可能でしょう。
そして、公共工事限定ではありますが、土木系も建築系も7〜8月の酷暑期をなるべく避けて工程を組むことも可能でしょう。
そもそも20年以上前は、公共工事は年度をまたがる物件以外では、年度末の3月に竣工を迎える施工物件が多く、そのため、5〜9月くらいまでは、建設業者の閑散期であったと思います。
暑さの本番は8月ですが、7月の気温も相当高く、安全配慮の観点からも施工を避けるべきなのです。さらに梅雨というと6月を思い浮かべる方も多いのですが、実際、7月も梅雨時期であり、この10年のデータでは、7月の31日間のうち15〜20日が梅雨時期とのデータもあり、土木系では施工中止が多いのです。
では、本当に62連休が実現可能なのか。
人材採用の観点から中小建設業においても年間休日数は125日ほど設定しなくては、人材採用がままならないのが現実です。
この年間休日125日をベースに7〜8月の62連休を設定した場合、他の1〜6月、9〜12月の休日を日曜および祝日とし、年末年始に数日の休日を設定することにより、年間休日125日で収まり、決して、62連休も実現不可能ではありません。ただ、一年間の変形労働時間制の採用や、その働き方に見合った人事評価制度や賃金制度が必要ではありますが、この件については、今後の連載でわかりやすく説明します。
考えてみてください。
7〜8月のバカンスシーズンに62連休(若しくは長期休暇)が取得できる業界であれば、若手人材にとって就職人気業種になる可能性は期待できませんか。
しかも、AI・ITに奪われる可能性が少ない職種です。
前回、人材が魅力を感じる業界・仕事・会社として
@自らの価値が向上できる
A向上した価値を認めてもらえる
B安心して長く働くことができる
を挙げました。建設業界は@については該当しており、Aは会社次第、Bが問題であることを説明しました。
正に建設業界における酷暑期である7〜8月の現場作業が「安心して長く働くことができない」原因になっており、若手・女性人材およびその親や配偶者が建設業界への入職を躊躇させる原因の一つです。
これこそ、酷暑が建設業に与える“見えない損失”といえるでしょう。
建設業界で働く人材が増加しないという負の影響以外にも、実際に建設現場で働いている人材に対するリスクがあります。
例えば、酷暑下の作業では、以下のことが予測されます。
・生産性の低下
・ヒューマンエラー
・健康上のリスク
実際、29℃環境下と23℃環境下では効率が約5%低下し、35℃環境下で連続作業を行うと23℃環境下での作業と比較して約20%エラーが増加するという国交省のデータもあります。
熱中症の発症リスクとしては、31℃では熱中症発症のリスクは低いが、35℃では熱中症発症のリスクが非常に高まるのです。そのことからも昨年6月から現場へのWBGT計(暑さ指数計)の設置・計測義務および対策が課されたのも理解できます。
次回は、高温化での施工における品質リスクや他のリスクについて触れていきましょう。