〈日々の栞〉明治のナイチンゲール

▼3月30日から、NHKの連続テレビ小説『風、薫る』が始まった。明治時代、まだ看護婦という言葉すら存在しなかったころに、その職業の礎を築いた大関和(おおぜきちか)と鈴木雅(すずきまさ)の2人をモチーフにした物語となる
▼このドラマの原案となったのは、田中ひかるの著書『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社)だ。主人公の1人である大関和は、幕末の安政5年に黒羽藩(現栃木県大田原市黒羽町)で家老の娘として生まれた。先日、栃木県を訪れた際、道の駅などで彼女にちなんだ企画などが催されているのを目にし、気になってこの本を手に取った
▼同書では、幕末から明治という激動の時代を背景に、日本になかった西洋式の看護を手探りで実践していく苦労が描かれている。また、女性の社会進出が困難だった時代、名もなき道を自ら切り開いていく覚悟は現代と比べて相当なものがあったことだろう
▼2人は英語を習得しながら、1886年に桜井女学校附属看護婦養成所に1期生として入学し、洋書の原典を翻訳することで看護の技術を学んでいった。卒業後は帝国大学医科大学第一医院でトレインドナースとなった
▼現代では、看護師など社会の維持に欠かせない人々をエッセンシャルワーカーと呼ぶ。私たちはその存在を当然のものとして受け入れているが、その歴史の裏には、決して順風満帆ではなかった先駆者たちの献身がある。ドラマは2人をモチーフとした創作物語となるが、近代日本の看護を支えた女性たちの姿を通じて、現代社会を支える人々の尊さに改めて光が当たることを期待したい。(群馬・NT)
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〈2026/04/17配信〉

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