ただ誤解しないでください。建設業の人材不足解消のために7月・8月を62連休にするのではなく、施工品質のリスクやその他のリスクを回避することも非常に大きな目的であることをご理解いただきたい。
23℃作業環境下よりも35℃作業環境下の方がヒューマンエラーが20%増加することは、前回お伝え済みですが、労災事故の多くの原因がヒューマンエラーであることから酷暑下での作業は労災事故が発生しやすいことになります。実際、脱水症状の初期段階によるふらつきやめまいによる施工ミスも考えられ、他にも集中力の欠如による施工ミスもあるでしょう。
他にも酷暑下での作業による離職率の増加や技能の伝承にも負の影響が避けられません。データの存在は不明ですが、未経験で入職した場合、酷暑期に入職した場合の離職率が増えると思えるのは私だけでしょうか。
そもそも酷暑下において作業者が発揮する技能に影響を及ぼさないと考えるのは楽観的といえます。ざっと挙げただけでも以下のことが推察できます。
【酷暑下の作業による人材が発揮すべき技能への影響】
@集中力や注意力の低下
Aヒューマンエラーの増加
B作業スピード低下と作業中断の頻発
C疲労からくる施工精度の不安定化や士気低下
D水分/塩分不足による判断力鈍化
E管理監督者の現場巡回頻度の減少
F安全意識の低下
G材料特性変化への対応不足 など。
以上、主に原因を列挙しましたが、これらの影響を推察すると恐ろしくなります。
本来であれば、一つ一つ説明すべきではありますが、紙面の都合により、最後の「G材料特性変化への対応不足」についてどのような影響があるのかに触れておきます。
・コンクリートへの影響
高温下での打設は水分の急激な蒸発を招く恐れがあり、コールドジョイントの発生や初期ひび割れのリスクが高まり、その結果、強度や耐久性が確保できなくなる可能性があります。
・舗装工事、塗装工事への影響
高温下でのアスファルトは急激に冷えにくく、施工性が低下します。また、酷暑下において、開放温度である50℃以下に果たして達しているのか?達する場合、どの程度長時間必要なのか疑問が残ります。
塗装工事においては、乾燥速度が変わりムラや剥離という仕上げ品質低下の可能性があります。
植栽工事においては、酷暑下に限ったことではありませんが、時期選定が必要でしょう。
・仕上げ工程への影響
内装工事において、急激な材料の温度変化は、接着不良や変形の原因となります。
他にも酷暑が与える施工品質上の問題はあると思います。実は、この辺の問題については、施工されている皆様ご自身が既に感じていることであり、認識されていることでしょう。実際、私もISO9001・ISO14001・ISO45001主任審査員として現在でも年間40社以上の建設業者の審査を担当していますが、仕様書や「施工計画書」に規定されている施工条件である“5℃以下”“40℃以上”“湿度85%以上”などの基準が果たして遵守されているのか甚だ疑問の場合もあります(塗装工事の場合)。
今回は、酷暑が施工品質に与える影響について説明しましたが、国交省発行の「猛暑対策サポートパッケージ」には、酷暑期に対する様々な参考になる情報が記載されていますので、この連載においても取り上げていきたく思います。
次の第4回は「夏季休工を実現する“工程と時間”の設計(変形労働時間制)」について説明します。